「破壊」し 「破壊」される 歓喜

    >secret Aさま

    お返事、たいへん遅くなりました。

    お返事の前に、ざっとナショナル・シアター・ライヴ 『フランケンシュタイン』の感想を述べさせていただきます。
    その方が、お返事の意図が伝わりやすいと思いますので・・・。

    まず、最初の印象は
    「ちゃんとお金かけてるなぁ・・・」ということ
    天井に無数の電球があり、それが点滅することで、さまざまな効果を生んでいる。
    その煌めきは、自然現象を表現していたかと思えば、登場人物の心理状態を表現している時もある。

    回り舞台から、らせん状に次のシーンのセットがせり上がってくる。

    湖のシーンのためだけに、上からすのこ状のものが降りてくる。

    などなど・・・

    インゴルシュタットの人々が登場する時に乗ってくるセットも、
    大きな歯車が回るSLのような不思議な乗り物

    おそらく産業革命の国なので、人間が生み出した進歩と罪悪を象徴しているのだと思います。

    この作品のテーマにもつながるものなので、これが有ると無いとは、
    観客が作品を理解する上で大きな差が出ると思いますが、
    日本版の予算ではとうてい無理だったのでしょう。

    日本版は少ない予算でも、センスの良いセットでした。
    それはとても評価できると思いました。

    舞台は低い位置にあり、観客は常に上から登場人物を見下ろす位置にいます。
    映画のカメラアングルも真上から撮ったものが多く、「神の目線」をイメージさせられました。

    クリ―チャーが誕生するのは、球体ではなく丸い幕状のもの。
    そこから出て来てから、ビクターの登場までが、日本版の3倍くらい長い。
    (あくまでも私の感覚としてそう感じただけで、実際に時間を計っていた訳ではありません。)
    次の展開を知っているだけに、若干もどかしさもありました。
    しかし、無垢な新生児から「man」(Aさまがひっかかったセリフにも関わる部分。字幕では「男」と訳していましたが、私は「人間」と受け取りました。)に至るクリ―チャーを理解するには、これくらいの時間は必要だったように思えます。

    「これで私もmanになった」のセリフは、ド・レイシーがクリ―チャーに語った「原罪」(性善説と性悪説)
    ともつながる重要なせりふだったのだと、ナショナル・シアター・ライヴ版を観て、気が付きました。
    日本版の「よかったよ」は違和感しか感じなかったのに。

    > 不愉快だったのは「よかったよ」のセリフが
    > 「これで私も男になった。」(正確ですか?)に
    > なっていたこと。
    >
    > こちらのほうがしっくりするなとは思いました。
    > ただ英語はわからないのでどういうニュアンスのセリフなのかはわかりません。

    ごめんなさい。
    私に読みとる力が無くて、
    Aさまが、「しっくりくるな」と思われたのは、
    日本版の「よかったよ」の方ですか
    それとも、ナショナル・シアター・ライヴ版の「これで私も男になった。」の方でしょうか
    前者でしたら、私と同じように感じられたのかも、
    後者でしたら、「男」という翻訳のワードに含まれる別の意味を読みとられたのかもしれませんね。

    おっと、お返事に突入してしまいました。
    感想に戻ります。

    ナショナル・シアター・ライヴ 版で、抜群に良かったなぁと思ったのは、アンサンブルのみなさん。
    日本版では、ガチャガチャと五月蠅い印象しかなく、正直「邪魔」でした。
    ナショナル・シアター・ライヴ 版は自然、かつ庶民のエネルギーも伝わってくる
    「邪魔」どころか、「効果的」な演技でした。
    ド・レイシーの息子とお嫁さんも、「元々はインテリだったのだろうな・・・」という知性も感じられました。

    ナショナル・シアター・ライヴ 版で初めて気づかされたのは、
    この作品の重要な要素に「階級社会」イギリス独特の背景があるという事でした。

    カンバーバッチのビクターは貴族然とした風情が印象的でした。
    父への満たされない思いも全面に出ていました。

    カメラワークも各バージョン違いました。
    ビクターの弟ウィリアムの亡きがらがボートに乗って流れてきたシーンで
    最初にウィリアムを抱き上げたビクターに父が
    「私の息子をこちらに」と言った時、
    カンバーバッチのビクターバージョンは、アップでビクターの表情をとらえていましたが、
    ミラーのビクターバージョンは、ビクターと父をフレームに入れた、さらっと流したカメラワークでした。

    その為、カンバーバッチバージョンの方が、
    父の言葉に対して複雑な表情を浮かべたビクターが強く印象に残りました。

    クリ―チャーも、それぞれ全く違ったアプローチでした。
    ミラーのクリ―チャーは、愛らしく「無垢」の部分が強調されていました。
    カンバーバッチのクリ―チャーは、悪に染まって行くさまを突きつめていました。

    どちらも最後のシーンまで、不完全さを残す演技は共通でした。
    日本版では、ド・レイシー一家に復讐するあたりから、
    クリ―チャーがなんだか「普通」の「カッコ良さ」を醸し出していましたが・・・。
    ナショナル・シアター・ライヴ 版では、
    どんなに知性を身につけても、言葉の端々が詰まったり、
    身体の動きが時折自分の意思に反して引きつるクリ―チャーでした。
    そういう造形をすることで、クリ―チャーが「人間が創り出した不完全なもの」なのだと言う、
    現実を突きつけられ、登場の衝撃シーンに何度も引き戻される感覚を味わいます。

    ラストシーンは、ビクターが求めていたものも、クリ―チャーが求めていたものも「愛」であり、
    自分が生み出したクリ―チャー(人間が生み出した罪悪)を壊すことと、
    自分を生み出した人間から壊されることで
    互いに「愛」を実感することができた歓喜が
    大変クリアに伝わって来ました。

    日本版では、二人の演技の未熟な部分を、私の想像力で、相当頑張って穴埋めした結果
    涙がじんわり滲んだラストシーンも、
    ナショナル・シアター・ライヴ 版では、頑張らなくても自然に涙が頬をつたいました。

    前置きが長くて、すみません。

    さて、いよいよお返事です。


    > もっともカンバーバッチさんは高校、大学と演劇を学び、ローレンスオリビエ賞を始め数々の賞を取っているんですから、坂本さんと比べるのは酷というものですよね。

    いや、酷じゃないですよ。
    経歴はどうあれ、舞台に立ったらからだ一つが頼り。
    プロなんだから、ちゃ~んと比べて「あんたは、まだまだだよ」と言ってあげた方が良いと思います。

    > びっくりしたのは ダンスシーンは日本版だけ?
    > なんで踊らないの?と思っちゃいました。
    > あそこ好きなシーンだったのに。

    もともとは、踊らないシーンだと思います。
    おそらく、踊れる二人ゆえに、演出の鈴木さんのはからいで、見せ場を作ってくれたのでしょう。
    でも、とって付けた感がなくて、ステキでしたよね。
    クリ―チャーのとまどいや喜びが伝わってくる演出でした。

    > どちらにしても これってエリザベスという女性の全人格を否定していませんか?
    > でも原作者は女性ですね。
    > それほど女性は抑圧された存在だったんでしょうか? 
    > 「愛している。」(日本版にありましたっけ?)の
    > セリフが素直に受け取れませんでした。

    女性が抑圧されている存在だったことは、事実だと思います。
    私は、「女性の全人格を否定している」ようには、感じませんでした。
    むしろ自分を置いてロンドンに行ってしまうビクターに対して、
    「自分を連れて行って」と懇願するエリザベスの姿に、
    蔑まれている女性の立場への抵抗を感じました。
    また、彼を目の当たりにした人間の中でただ一人、クリ―チャーを受け入れたエリザベスの姿を観て
    「女性の包み込む感性の素晴らしさ」(「母性」と言い換えても良いと思います。)を表現しているように感じました。

    エリザベスに襲いかかる前
    ナショナル・シアター・ライヴ 版では、クリ―チャーが心から謝っているように見えました。
    そのためか、日本版よりも、その後の行為の理不尽さが薄れ、私は納得できました。

    > 坂本さん大健闘じゃないですか(偉そう?)

    そう思います。
    そりゃ、十分ではありませんが、大健闘です。

    「坂本さんのビクターと坂本さんのクリ―チャーの共演が観たい
    というのは、ファン共通の願望だと思いますが、
    そのイメージに近いのが、
    フランケンシュタイン博士:ベネディクト・カンバーバッチ
    クリ―チャー:ジョニー・リー・ミラー
    バージョンでした。

    だからこちらが好きなのだと思います。

    「ちっ、結局、親バカならぬファンバカですか・・・」
    と、自分に舌打ちしたい気分ですが、
    どう転んでもバカなんだから、
    しょうがない。

    ちなみに、一緒に行ったGOママは
    逆バージョンが好きなんだそうです。
    がっちりジャガイモ系のハスキーボイスが好きな彼女ならではの、
    選択です。

    私は、カンバーバッチの声の方が、セクシーだと思うんですけどね。


    追伸

    カンバーバッチさんは、あちらの方にしては
    お顔も大きめですし、脚もそんなに長くない。
    (あくまでも全身のバランス的に)

    あれれ
    うちのぼんくら(「ダメな男」好きの私的には褒め言葉です。)の方が、
    もしかしたらスタイル良い
    って、思っちゃった私を
    カンバーバッチファンの皆さま
    お許しください。

    スタイルだけですから、勝てそうなのは。
    演技力と知性では完璧に負けてますから。
    Date: 2014.03.09 Category: フランケンシュタイン  Comments (0) Trackbacks (0)

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    Author:ぽん
    V6(ファンになって14年目)と
    ウルトラ(ファンになって49年)と
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    (足を運び始めて22年)
    様々なジャンルの舞台(はまって50年)から、
    日々の活力をもらっています。

    これらに共通するのは、「イマジネーションを喚起する一期一会の出会い」があることです。

    いくつになっても、自らのイマジネーションの泉を枯らさないために、ブログを書いています。

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