思考停止の誘惑に抗う 「祈りと怪物」蜷川バージョン 1月14日・15日

    1月14日夜と15日夜

    「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~」蜷川バージョン
    を観ました。

    私にとっての14日が初の蜷川バージョン

    この両日、当初の予定には入っていませんでしが、
    Mさま、Sさまのご好意で幸運にも2日続けて観ることができました。

    ただし15日は、急遽予定が入ったため、シアターコクーンに到着したのは、午後7時過ぎ。
    開演から30分ほど遅れてしまいました。

    14日は客席中央を横切る通路のすぐ前の列の下手寄りの席
    15日は下手側中2階席の後方の席
    でした。

    お屋敷や墓地が舞台の奥に配置されていたケラバージョンに対し
    舞台が2段構えになっていて、下の段で演じるときは客席にかなり近かった蜷川バージョン

    14日の席は真ん中より前でとても見やすかったです。
    しかし、下の段で演じる時は、前の方の頭で役者さんの膝から下は見えませんでした。
    通路を多用した演出でしたので、演技を間近で観ることができました。

    15日の中2階は、初めて入りました。
    上の段で演技している時は見えるのですが、下の段に降りて演技していると、
    手すりが邪魔で、半分位見えませんでした
    蜷川さん、中2階のことも考えて、舞台作ってくださいな。

    トビーアスが科白を言っているのに、顔のところにちょうど手すりがあって、
    首から下しか見えないなんてこともあって、ちょっと泣きたくなりました。
    かと言って、体を前に乗り出すと他の方に迷惑なので、
    「しょうがない、しょういがない」と自分に言い聞かせて、
    背もたれから背中を離さず観ました。

    中2階の後ろには立ち見の方も上手、下手合わせて20名位いらっしゃいました。
    4時間の長丁場をずっと立ってご覧になっていた皆様。
    お疲れ様です。

    観客の年齢層も幅広く
    ケラさん(蜷川さん)の人気ぶりがうかがえました。

    さて、感想です。


    蜷川バージョンの前に、ケラバージョンについて触れておかなければなりませんね。

    ケラバージョンは、昨年の12月21日夜の公演を観ました。


    その時の感想は

    群像劇だけにいろいろなものを詰め込みすぎて全体にぼやけていたように感じた。
    今ひとつテンポに乗り切れていない。
    私から見て「ここは必要か」という部分も多く、冗漫な印象。
    ギリシャ悲劇を意識した展開とコロス的表現を用いているが、生かしきれていない

    というものでした。

    その後、ケラ作品をよくご覧になっている方から、
    「深いことをあれこれ考えず、不思議な世界に迷い込んだ感覚を楽しむ」という
    ケラ作品鑑賞のツボを教えていただきました。

    ついつい、作品の解釈に走り、変にこねくり回して考えすぎてしまう
    私の悪い癖が出てしまったようです。

    貴重なアドバイスに、目からウロコが落ちた気持ちになり、
    「なるほど。じゃあ、蜷川バージョンはそれで行こう」と視点を切り替え、
    今回の蜷川バージョンに臨みました。

    蜷川バージョンは、台本は同じでも、ケラバージョンとは全く違う作品になっていました。

    4時間超の上演時間を耐えられるか・・・という
    当初の心配をよそに
    驚く程楽しめました。

    以下は、ネタバレになりますので「続きを読む」に書きます。

    かなり踏み込んで書くつもりですので、「ネタバレはダメ」という方はお読みにならない方が良いと思います。


     


















    蜷川バージョン、1回目の印象を一言で表すならば

    相変わらずあざとい演出だが、そのあざとさが功を奏した

    というところでしょうか。


    ケラバージョンで私にとって一番のネックだったのはコロス的表現の部分です。

    役者さんが慣れていないせいが、複数の声がバラけてひとつにならず
    それゆえに、何を言っているのか聞き取れない。

    重要な部分だと思うので、一生懸命聞き取ろうと努力するのですが、
    うまく聞き取れないので、正直イライラしました。

    私が失礼にもケラバージョンのこの部分を「稚拙なコロス」と評したのに対し
    前述のケラさん経験者の方は、「蜷川さんを意識してわざとそうしたのではないか」と
    おっしゃっていました。

    確かにギリシャ悲劇は蜷川さんの得意分野ですからね。
    「さあ、ニーナだったらどうする」っていう、挑発

    「蜷川さんは正統派で行くのかしら・・・」という私の予想を裏切って
    蜷川さんはその部分をラップにしちゃっていました。

    群唱をラップにするのは、すでに串田和美さんが、コクーン歌舞伎「佐倉義民傳」でやっていますので、
    二番煎じ感は否めませんが、ケラバージョンコロスよりも、ずっと聞き取りやすかったです。
    しかも、上手と下手に設置されたモニターに、ご丁寧にラップ部分を全部映し出すという
    技も繰り出していました。

    さらにご丁寧なことに、場面設定などのト書きもモニターに映し出されていました。

    出演者に比例し、幅広い年齢層の観客が来ることを予想して
    観客の経験値に合わせ「へんなプライドは捨て、どこまでも降りていくぜ」的な
    潔さを感じました。

    と同時に、

    「剛ちゃん、可愛い可愛い剛ちゃん見るだけで幸せ」
    なんぞと言っている輩には、これくらい親切にしないと理解できんだろう。

    と、舐められているようにも感じた私は、やっぱりへそ曲がりです。

    この他にも、雨を降らせたり、奥を開けたり
    あざとさ全開でした。

    奥を開けるのは、もはやニーナの得意技ですね。

    けなしているのではありません。
    最初に書いたように、これらのあざとさが
    物語から冗漫さを排し、緊張感とわかりやすさをもたらしたということを、
    私は歓迎したい気持ちでした。

    そんな新鮮な気持ちで楽しく観ることができた1回目の14日に対し
    2回目の15日は、またまた私の悪くせが出始めました。

    ああでもない、こうでもない
    と思いを巡らし始めたのです。

    答えなどない
    というのが答え

    そんな作品なので、考えれば考えるほど
    迷路に迷い込みます。
    それでも、考えてしまうたちなので、だんだん頭が混乱し
    「ああ、もうどうでもいいやっ」とついには思考停止に陥ります。
    しかし、思考を停止するのは悔しいので、それに抗ってまた考えようとします。
    そんな無限ループのような闘いを繰り広げながら見ている私は、
    カーテンコールの頃には、もうぐったりです。

    考えずに感覚だけで楽しめばいいのにね。

    「血のつながり」ってなんだろう・・・とか
    「倫理」ってなんだろう・・・とか
    「憎しみ」ってなんどろう・・・とか
    「愛」ってなんだろう・・・とか

    考えちゃうんですよ、どうしても。



    さて、書きたいことは多々あれど、
    ケラバージョンと蜷川バージョンで感じた大きな違いのひとつについて
    今回は述べさせていただこうと思います。


    それは、
    トビーアスと祖母の関係です。


    14日の終演後、GOママと一番たくさん話をしたものそのことでした。

    ケラバージョンのトビーアスは、
    「祖母の呪縛」が、破滅へと彼を導いた印象が強く残りました。

    しかし、蜷川バージョンのトビーアスから「祖母の呪縛」は全く感じられず
    むしろ「祖母への愛」に溢れた印象でした。

    それは、それは、切ないほどおばあちゃんが大好きなトビーアス
    それは、演じている剛くんの感性が導き出した表現なのかもしれません。

    『金閣寺』の時も、
    金閣に火をつけた後、溝口が「生きよう」と言うにも関わらず
    雑誌などのインタビューで述べているように、
    その時「死にたいと思った」彼の感性

    今回も、彼の感性がトビーアスに色濃く反映しています。

    「祖母の呪縛」が前に出ないと、トビーアスが狂気に飲み込まれる必然性は薄れてしまいますが、
    それとは別の何かが浮かび上がってくるようにも、感じました。
    それが何なのか、今はまだわかりません。

    3分の長科白で殺戮を叫び、
    「パブロ。君はいつも正しい」と哀しげに言ったトビーアスを
    もっと理解したい。

    あと2回トビーアスに会える予定なので、
    出来うる限り、無用な思考は排除し、感覚を研ぎ澄ませて
    トビーアスを受け止めようと思います。
    Date: 2013.01.16 Category: 「祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~」  Comments (3) Trackbacks (0)

    この記事へのコメント:

    GOママ

    Date2013.01.18 (金) 01:05:59

    17日に見て参りました。客席に、いのうえひでのりさん(ケラ版の時もいらしていた)がいるなと思っていたら、知り合いが6人も…。


    今日のトビーアスは、前回気になっていた、時々普通に歩くところが改善されていました。


    これ以降は、ネタバレになるかもしれません。

    私なりに思考しまして、観劇に臨みました。やはり、その方がスッキリしますね。


    ケラ版がケラさんがやりたかった物とすると、人間は俗っぽいもので、欲がなければ始まらないが、それだけでは破滅に至る…(唯一欲望に走らなかったローケは生き残る)という感じかと。


    蜷川版はいくつかのパートから、人間的に感情移入しやすいのを重点的にして、品を保っているかと思います。


    そして、整理してみると、聞き逃してる台詞がいくつかありました。


    トビーアスが、ガラスが辛そうという台詞は、撃たれるシーンの前にも登場してるのですね。


    ジャムジャムジーラと同じく、ガラスも「幸せなわけではない」が蜷川版ガラスなのかなと思いました。


    後、トビーアスは最後までパブロは生きていると言い張るのですが、ケラ版もそうだっけ?


    やはり、トビーアスとパブロの関係性や、解釈で台詞を代えてるのかな。

    ガラスの言う「倫理」は、自分の考える主観的秩序であって、「倫理」は普遍性なものでないを言いたいのかと考えました。

    ケラ版の時にあんなに「倫理」って言ってたっけ?

    ケラ版はそんなに集中してなかったのか、情報量が多すぎで覚えられなかったか?

    この舞台の「愛」は近親が一番強く描かれてました。だから、トビーアスのおばあちゃん大好きもアリだと思います。


    トビーアスの愛は

    マチケ<パブロ<おばあちゃん

    ですから。


    後、ガラスは打つ前にトビーアスを抱き寄せるのに、今日気づきました。それはそれは愛おしそうに。

    トビーアスもガラスが嫌いでも無く、むしろ好きに描かれてます。

    これはドンドンダーラの孫だから?

    最初はむしろみんな厭うてるみたいなのに。


    もしかしたら、少し変化したかもと思う今日でした。

    ぽん

    Date2013.01.17 (木) 07:50:33

    >TRISTAR777 さま

    コメント、ありがとうございました。

    > 追伸:金閣寺での「死にたいと思った」というは、多分雑誌にはなくパンフレットだけだったと思います。KAAT版と凱旋公演版、2種類(2時点)でそれぞれ言っていたと。

    そうでしたね。
    ほんとにいい加減な記憶で、適当なことを書いてしまって申し訳ありません。

    皆様のフォローあっての私です。

    記事が参考になったとこのと、それはたいへん嬉しいです。
    観劇を検討されているのですね。

    この作品は、独特の世界観がありますし、
    「観やすい作品」とは言い難く
    かつ、どちらかと言うと「私好み」の作品ではありませんので、
    胸を張って「ぜひ観てください!」とは言えませんが、
    舞台の上で、トビーアスとして生きる森田剛は、観る価値があります。
    それは、間違いありません。

    追伸

    質問メール大歓迎です。
    ・・・が私もお返事が遅くなる恐れアリ。
    それでも、よろしいでしょうか?

    TRISTAR777

    Date2013.01.17 (木) 03:22:10

    ぽん様、こんばんは。
     観劇感想と、構成等のアップありがとうございました。大変参考になりました。お礼まで。

    追伸:金閣寺での「死にたいと思った」というは、多分雑誌にはなくパンフレットだけだったと思います。KAAT版と凱旋公演版、2種類(2時点)でそれぞれ言っていたと。

    ついでに私信
     お忙しい中いただいた回答?メール、読ませていただきました。なのに、お返事遅くて済みません。しかも、お返事の前に、それに関する質問メールを送ってもよろしいものでしょうか?。

    管理人のみ通知 :

    トラックバック:


    電力使用状況&電気予報
    記念日カウントダウン!
    プロフィール

    ぽん

    Author:ぽん
    V6(ファンになって14年目)と
    ウルトラ(ファンになって49年)と
    ディズニーリゾート
    (足を運び始めて22年)
    様々なジャンルの舞台(はまって50年)から、
    日々の活力をもらっています。

    これらに共通するのは、「イマジネーションを喚起する一期一会の出会い」があることです。

    いくつになっても、自らのイマジネーションの泉を枯らさないために、ブログを書いています。

    フリーエリア
    バナー貼るのが遅くなってごめんなさい。 何度も失敗して、やっと貼れました。 「ボーイ フロム オズ」日本版キャスト盤CD発売に向けて多くの方の賛同を募っています。 ご協力お願いします!
    最新記事
    最新コメント
    カレンダー
    07 | 2017/08 | 09
    - - 1 2 3 4 5
    6 7 8 9 10 11 12
    13 14 15 16 17 18 19
    20 21 22 23 24 25 26
    27 28 29 30 31 - -
    HS月別アーカイブ
    カテゴリ
    最新トラックバック
    FC2カウンター
    リンク
    お天気BOX









    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    QRコード
    QRコード